【絶対】なぜ新卒でタクドラになってはいけないのか【NG】

近年のタクシー会社の大きな変化の一つに、新卒採用があります。

営業所によっては研修後のひと月で半減することもあります、ええ、だって新卒だろうが何だろうが、しょせんはタクドラですからね・・・

特に大手系では大々的に新卒をターゲットにした採用活動をしているので、特にこの業界に興味のない人でも目にしたことがあるかもしれません。

四十代でも若手といわれるこの業界に、大卒の新人がゴロゴロ入ってくるなんて、ひと昔どころか数年前でも考えられない事態でしたが、コロナによる就職難もあって、大手系では今や当たり前のように数百人規模で新卒が入社する事態に至っています。

まあ大半は他に内定が出なくてやむなくという方だと思いますが、中には「業界を変えてやる」みたいなリクルーターの寝言PRにたぶらかされたままハンドルを握ってるおバカな若者も少なくありません。

しかし天下のNHKまでこんな特定企業のヨイショ記事(↓)を臆面もなく公式HPに載せる時代になるとは・・・いくら何でもやばくないですかね、「公共放送」のNHKさん。。

日本交通に聞く タクシー業界で新卒採用拡大の理由|NHK就活応援ニュースゼミ
【NHK就活ゼミ】 今、新卒採用を急速に拡大しているタクシー業界。どうして採用を拡大しているの?タクシー業界ってどんな働き方?日本交通に聞きました。

まあこんな提灯記事を真に受けておバカな若者何百人かの人生がひん曲がろうが底辺這いずり回ろうが、平均年収2,000万円の上級国民様にはどうでもいいのでしょうね。

・・・とまあそれはさておき、前記事でも少し触れましたが、今回はなぜ新卒のタクシー就職がNGかについて、実際にタクシー会社を経験した立場から深掘りしたいと思います。

スキルが身につかない

何度も言いますが、現在のタクシーは簡単な仕事ではありません。

何だかんだ言ってもメインの顧客は深夜の酔っ払い。当然ながら老若男女の酔いどれを軽くあしらう接客スキルが必修です。だから水商売なのね・・・

二種免許や地理試験はもちろん、メーターやらナビやら無線配車やらアプリ配車やら、ややこしい機器の操作を覚えたり、フードデリバリーだの乗り合いタクシーだの介護サポートだの、次々トップの思い付きのままに繰り出される新たなサービスにも対応することが求められます。決してお客を運べばそれでよいというような単純労働ではありません。

にもかかわらず、そうやって次々と学んだ「スキル」が他の業界で活かせるかというと、代行運転や介護運送など二種免許が直接活かせる隣接業種を除いてほぼ何の役にも立たないのが実情です。

よく言われるハイヤーへの転身についても、現実には非常に厳しい門です。少なくとも私の知る限り、周囲のドライバーでもそんな転身を遂げた方は一人もいませんでした。

他業界に転職しても役に立つ業務スキルといえば悪質クレーマーと酔客のあしらい方くらいですが、こんなものは別にタクシーに乗らなくても居酒屋のバイトで十分学べるスキルです。

そして事務に関してはあまりに特殊なので(唯一学べるのは煩雑な手書き伝票を電卓で処理するスキルくらいですwww)、ワードやエクセルを始め普通に一般企業で求められるようなPCスキルは何も得られません

すでに先の見えた中高年ならともかく、これから何十年もキャリアを積まなければならない若者がキャリア形成の最初の時点でこんなオワコン業界を選んでしまったら、人生大爆タヒ確定です。

それとも普通に一般企業や官庁でキャリアを積んでいく同級生たちを横目に、夜な夜な酔っ払いを相手に歩合給で一生ハンドルを握り続ける覚悟があるのでしょうか? 

あるいはいかに業界の大手とはいえ、新卒で採用するウン百人を全部、幹部に育て上げる覚悟と体力がタクシー会社にあるとでも、本気で信じているのでしょうか?

衰退しつつある業界そのもののキャパから考えても、私には到底絵空事にしか思えません。

給与は歩合

タクシー会社の給与は基本的に売り上げによる歩合給ですが、大手の新卒に関しては先の短い中高年よりも保証給を優遇しているケースが多く、中には月給30万円なんて会社もあります。

このため、単純に初任給で比べると他の大企業や公務員より一見多くもらえるようにも見えたりしますが、この額が保証されるのは最初の数か月だけです。

見かけの給与にだまされてはいけません。タクシー会社の提示する給与例は歩合給で実現可能な最大の理想値です。普通のまともな大手企業が出しているのは平均的な支給額で、他に賞与やら福利厚生やらもあり、およそ比較の対象にすることすらおこがましいです。。

保証期間が終わると普通の歩合給になります。その場合でも最低額の保証はありますが、この保証される最低額は普通に勤務してればこのくらい確実に稼げるだろという額なので、保証の意味はほとんどありません。

また一般企業では週休二日+祝日休みがデフォですが、タクドラは夜勤メイン・土日祝なしの変態シフト勤務だということも忘れてはいけないポイントです。

隔日勤務の月13日出勤は昼職に換算すると月25~26日勤務に相当します。つまり実質週休1日です。それに加えて祝日もお盆も年末年始の休暇もありません

これだけ勤務時間が長い上に深夜勤務までするのですから他業界より給与が多くて当たり前です。むしろもっと貰わないと割に合いません。

また賞与はほぼないと考えた方がいいです。

正確に言うなら一応形だけ支給する体にはなっていますが、普通の会社みたいに「基本給の〇か月分」といったものではなく、「自分が売り上げた総額の〇パーセント」みたいな決まり方で、そもそもが賞与というより本来給与でもらえていたはずの額を会社がプールして後出ししてるだけというのが実態です。

そしてこのコロナ禍、タクシー会社がいつまで形だけでも「賞与」を出すかも分かりません。

そして二、三年もすると普通の大手企業なら主任やらなんやらの手当がつき、さらに毎年定期的に昇給しますが、タクシーにはそんな仕組みはありません。

タクドラは基本的に一生歩合給です。

稼ぎたければ休憩や仮眠の時間を削って走り回るしかありません。ええ、歩合給ですからね・・・

もっとも本社の事務・管理部門へ異動になれば別ですが、その場合は隔日勤務という変態シフトから解放される分、運転手よりも給与レベルは数段ダウンするのが普通です。

目先の数か月の手取りに目がくらんで間違った選択をすると、後でとんでもなく後悔することになります。

そもそも本来の意味の「月給」と「歩合給」では全く性質が違うという点にも注意が必要です。

サラリーマン上がりの方はこの点の認識が決定的に甘い人が多いですが、歩合給というのは「売り上げてなんぼ」の世界で、実質的に日雇い労働と何ら変わらない不安定な給与体系です。

もちろん多くの会社では「保証給」の制度があり、売り上げが少ない月でも一定額を保証するという触れ込みになっていますが、これには営業時間や走行距離、無事故無違反であること等々もろもろの条件があり、保証額も「そんだけ条件を満たしてたらよほどの事情がない限りそんな額下回るわけがないやろ」という辺りの絶妙なラインで設定されているので、単なる気休め以上の意味は皆無です。

くどいようですが、普通の月給制のサラリーマンとは違い、文字通り自分の時間と労働力を資本家に切り売りするのがタクシードライバーという仕事の現実です。

その本質をぼかしたまま「業界を変える」だの「タクシードライバーという仕事を誇りを持てる仕事に変える」だの言われても絵空事でしかありません。

また福利厚生に関して言うと、タクシー会社の福利厚生は大手だろうと中小だろうとほぼ皆無です。

採用HPにはいろいろ華々しいことが書いてあったりしますが、書いてあるからと言って誰でも自由に活用しうるとは限りません。世の中には不文律というものがあります。

私の会社では中高年には交通費すら出ませんでした。今どきバイトでも交通費くらい多少は出そうなもんですがね・・・

人間関係が作れない

人間関係が作れないという点も、先の長い若者にとっては大きなマイナスポイントです。

この仕事にチームワークなんてありません。ただ言われた通りに車を動かすだけです。

そんなことはない、いろんなお客を乗せるじゃないかという人もいますが、都心のタクシーで同じお客さまを乗せることはほぼありません。

固定客だらけの地方へ行けば話は違いますが、それこそ新卒の働くような環境ではありません。

またどのみちお客様とできるお話なんて世間話や雑談くらいです。

そして仕事中は営業所の内勤か予約センターのオペレーターとアプリ通話でやり取りするくらいで、上司や同僚といっしょに仕事をするということも皆無です。

この点、人間関係がしんどいという転職者にとってはメリットでもあり得るので、一概には言えないのですが、少なくとも未来のある新卒が最初からこんなガラパゴス的な環境でキャリアライフをスタートさせるべきではないと思います。

この部分は将来的にこの業界からの転身を考えるときにも大きな障害となります。

普段あまり意識しないかもしれませんが、面倒な上司の機嫌を察知してうまくあしらったり、嫌いな同僚とも(少なくとも表面上)仲良くできるというのは、転職時にこそ一番求められる重要なスキルなのです。

キャリアプランが描けない

現状、タクシードライバーという仕事は、若者が普通のキャリアプランを描ける仕事ではありません。

誰にでも未来は平等にあると思っていた時代が、わたしにもありました・・・ねーよ、そんなもん。。。

そもそもタクシードライバーという仕事がこの先いつまで存在しているかも、誰にもわからないのです。

たとえば巷で言われる「自動運転」の話ですが、少なくとも向こう10年程度ならタクシーやハイヤーの脅威になることはないでしょう。

21世紀には自動運転でこんなタクシーが走ってるとか、クラスの男子の半分くらいが本気で夏休みの課題に描いて謎のコンクールに応募してた時代がありましたっけ・・・

自動運転を実用化するためには、単に自動運転の技術を開発すればいいというものではなく、全国の道路や標識を改修したり、さらには万一の事故時の法的な責任問題みたいな制度設計まできちんと整えなければなりません。

車の問題だけならまだしも、こうした課題を10年やそこらでクリアするのは現実的に不可能です。

ですが、20年先、30年先なら話は変わります。

さすがにそれだけの時間のうちには、車はもちろん、道路や町並み、そして制度も法律も変わっていくでしょう。

そしてひとたび環境が整って自動運転の技術が実用化されてしまえば、運転手という職業はたちまち機械に奪われてしまうしかない仕事です。

とりあえず目先10年ほど逃げ切ればどうにかなる五十代以上は別としても、それ以下の年代でこの業界に入るのはリスクしかありません。

そんなバカな、と思うかもしれませんが、携帯セルフレジだって同じです。

携帯なんて出始めたころは「持ち歩ける電話なんて誰が使うんだよ?」とみんなが思ってましたが、今や小学生でも大画面のスマホで動画を見るのが当たり前ですもんね・・・

あとタクドラという職業はいわゆる水商売の一種という考えも根強く、他業界への転職や婚活の際にもネガティブに見られやすいということも知っておいた方がいいと思います。(↓関連記事)

タクシー会社は「幹部候補生」だらけ

私がタクシーの新卒がNGと思う最大の理由がこれです。

都心部ではその辺のオンボロ営業所にも2ケタの「若手幹部候補生」たちがひしめきあっていたりします。ええ、正気の沙汰ではありません・・・

今大手各社を筆頭に、コロナ禍にもかかわらず大量の新卒採用を掲げるタクシー会社が少なくありません。

最大手のN社やらM社やらを挙げるまでもなく、数百人規模で新卒を採用するタクシー会社もざらに出てきています。

もちろん次々と導入される新しいサービスや新技術への対応といった側面もありますが、会社規模や業界の現状からすれば、これらはとてもまともな数字とは思えません。

そもそもタクシー自体が斜陽産業ですし、運転手の不足にしても、そもそも運転手の待遇が劣悪だから先のない中高年くらいしか成り手がいないのです。

ここでタクシー会社が夢見がちな若い学生たちを集めるために用意したエサが「幹部候補生」やら「各種専門ドライバー」やらへのステップアップというわけです。

そうやって「あなたたちは中途採用のおっさんドライバー達とは違う、会社の将来を託された特別な存在なんだ」なんて言いくるめて新卒を刈り取ってくるわけですが、これって要するにマッチングアプリのヤリ〇クと同じ手口ですねwww

でも実際のところ、そうやって甘言に騙されて幹部候補生として鳴り物入りで入社したはずの新卒たちも、一年後には二~三割が離職し、三年後には半数以下になるのが現実のこの業界の姿です。

特に女性の新人は研修期間が終わって営業所に配属された直後に消えてしまうケースが後を絶ちません。

何だかんだ言っても、やっぱり若い女性にはまだまだ厳しい仕事なんでしょうね。

そしてタクシー各社はこうしたケースを見越し、最初から使い捨てにする前提で新卒を大量採用しているのです。

比喩じゃなくタクシーの人事はこんな感じです。花束もあいさつもありません。辞める?じゃさいなら。あ、短期の人は二種免許の金も返してね。

ちなみに余談ですが、コロナ以降悪化している求人状況を改善するため、官庁も政策的にこうしたタクシー各社の動きをバックアップしています。

後から知ったのですが、私の会社では二種免許の取得と自社で行う新人研修を職業訓練コースとして国に認定させることで雇用関連の助成金を受けていました。

研修期間から数千円の手当てが出て、割といい会社だなと思ったのですが、会社の負担は実質ゼロどころか手当以上の助成金でちゃっかりうるおっていたわけですwww

ちなみに私は1年弱で辞めたので二種免許の費用も全額返還させられましたが、これ助成金との絡みで言えば会社が二重取りしてんじゃないの?という気もします。

何にしてもやはり政治的に闇の深い業界だなと思いますね・・・

腰かけならありかも

ですが、全くの無職になって苦しむくらいなら、一時的なつなぎの腰かけとしてならタクシーへの就職もありだと思います。

だからっていつまでもやる仕事でないのは確かです。この仕事に未来なんてありません。

メリットとしては、平日の昼間に空き時間を作れるので転職活動がしやすいという点と、社会保険や給与などの最低限の労働環境は一応整えられているという点です。

特に平日の昼間に動けるというのは、転職活動の際に大きなメリットになります。

また完全に個人で動く仕事なので、次の仕事さえ決まったらいつでも辞められるのもメリットです。

普通の仕事だったら後任に引き継ぎが終わるまで最悪二、三か月の間退職時期を引っ張られたりしますが、タクシーには引継ぎも何もありませんので、極端な話、明日から誰がいなくなっても会社は困りません。

ちょちょっとシフト表をいじって、残っている人の出番を増やせばそれで終わりです。

ただし転職の際には十中八九「なぜ新卒にもかかわらずタクシー会社に就職し、そして辞めるのか」が問われることになると思いますので、それにきちんと答えられるような理由を考えておきましょう。

そしてともかく転職すると決めたなら一日でも早く動くべきです。

特にこの業界は隔日勤務などの特殊な勤務体系なので、長居すればするだけ体の生活リズムがそれに慣れてしまい、普通の昼間の仕事に戻れなくなってしまいます。

慣れてしまえばある意味で楽な業界ですが、それに甘んじてだらだらとぬるま湯の中につかり続けているとその環境が当たり前になってしまい、最終的にはそこから出ていく気力も体力もなくなってしまいます。

そうなってからでは遅いのです。

動くなら今、気力と体力のあるうちに動くべきです。

だって「今日が人生でいちばん若い日」なのですから。

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