よく大手タクシー会社の求人広告なんかで「当社には優良な法人案件があります」云々アピールしてるところがあります。もちろん嘘ではありません。コロナ禍でも優良な案件はあるところにはあります。
しかし会社がそれを誰に任せるかは別の話です。

少なくとも新人期間のうちは、「優良案件」なんて任せてはもらえないと思っておいた方がいいです。
まあそりゃあそうですよね、どこの馬の骨かもわからない、どんなミスをするか分からない新人なんかに、万が一でも既存の優良顧客をつぶされたらシャレになりませんし。
新人期間に会社が投げてくる案件というのは基本的に単発・詳細不明の電話予約くらいですが、たまに既存客を投げてくることがあります。この場合は十中八九固定の胸クソ確定案件です。
今回は私のタクドラ経験の総決算として、新人期間に会社からもらった胸クソ案件TOP3を挙げてみます。
って、需要あるんかいな、こんな自己満記事。。。
1000円おやじ
夜に梅田近辺を流していたときのこと、会社からの案件が飛び込んできました。

「〇時に東三国の××(居酒屋)」という予約案件でした。梅田からは新御堂筋に乗って淀川を越えなければなりませんが、運が良ければ新御堂経由で長距離のお客様かもしれません。
泥酔客でないことを祈りながら現地に行ってみると、乗ってこられたのは六十代とおぼしきおじさん、まあまあ出来上がってはいましたが、泥酔というほどでもありません。
が、残念なことにお送り先は「すぐそこ、近所や」。まあどうせそんなことだろうとは思いましたが。事務所も最初からショート客と分かってたから新人にふったんでしょう。
と思ったらタチが悪かったのはここから。急に真顔になって、「わしは常連客や。今までの運ちゃんはみな千円で行ってくれたで。そやから今回も絶対千円しか払わんからな」ですと。そんなん知らんがな。。。
で、実際にこのおっさんは千円札だけおいてさっさと降りてしまいました。
もちろん筋としては引き留めたうえできちんとメーター通りの額を払うように説得すべきなのですが、歩合給のタクドラに数百円のことで酔っ払いとグダグダ議論をしてる暇なんてありません。差額分は泣く泣く自腹営業(※)となりました。
※基本的にいったんメーターに計上されてしまった売り上げは、たとえお客様が払ってくれなかったとしても、よほどの事件的な事情でもない限り運転手が自腹を切って会社に納金しなければなりません。ホストとかホステスと同じシステムです。胴元は損しません。タクドラが「水商売」と言われるのも、この辺の事情もありそうな気がします。
しかし距離が短いのはともかく料金システム無視して勝手に自分論理で値切りだすとか頭どうなってんの。。。あまり言いたくないですが大阪人のこういうクソ厚かましいとこって大嫌いです。いいとこもあったりするんだけど。。
こういう人って乗るたびに毎回同じことしてマークされてるんでしょうね。そんで会社も事情を分かってない新人に振るという。なんかある種の食物連鎖というか弱肉強食というか。
だけど会社もうまくやってるつもりなんでしょうが、こんなゴミ案件ばっかり投げられたら新人もそりゃあ定着しませんよ。。。
最初から遅刻確約の案件
あれは真夏の夜中の四時頃だったか、会社の無線で「〇〇マンションへ迎車で行ってほしい」という指示が飛んできました。
指定時刻が四時半、場所は車で十分ほどの場所だったので楽勝かなと思ったのですが、指示をよく見ると「いつも時間に遅れる方です。指定時刻から10分待って出てこなければ下記の番号へ電話するように云々」という謎指示のおまけつきでした。

なんじゃそら? と思って10分ほど待ちましたが、やはり出てきません。この時点で現地着から30分以上待機状態、売り上げは予約料金の300円だけです。電話をかけてもなかなか応答してくれず、ようやく出てくれたかと思いきや、思い切り不機嫌そうな声で「すぐ行くから!」。
さらに20分近く経過したころ、化粧道具片手にようやくご本人が現れましたが、開口一番、「〇〇放送まで、急いでよ!!」
いや急ぐんならさっさと指定の時間通りに出てきてくださいよ、と言いたいのをこらえて法定速度ギリギリでとばしましたとさ。ご本人は無言で化粧の続きに専念なさってましたとさ。
売り上げはトータルで1500円ほど、深夜の1時間を浪費して実質時給750円弱。携帯代はもちろん自腹。
こんな商売やってられませんわ。。。
どうでもいいですがマスコミ系とか電〇とか、物腰はていねいでもどことなく世の中を勘違いしてるような人が多くて、私は苦手でした。あと基本的に社用チケットで乗車される方はお釣りもない代わりチップ類も一切ありません。
県外まで迎車で逝ってきな
これは私が事務所から投げられた中で、いまだに思い出すたび怒りで震えが止まらない、胸クソ中の胸クソ案件、キング・オブ・クソ案件です。
それはある日の乗務中のことでした。突然営業所から私の携帯(※私物)に着信があり、急いで車を止めてかけなおしたところ、何やら急ぎの件があるから至急営業所へ戻ってきてほしいと言うのです。

何事かと急いで事務所へ戻ると、今まで普段話をすることもなかった若手の内勤が急に「〇〇さん、そろそろ入社から三か月めだよねー」などと猫なで声で話しかけてきたのです。
真意を測りかねていると、「〇〇さんも仕事に慣れてきたようだし、そろそろ予約の仕事とかもやっていこうよ」と続けます。聞けば行先は県外、深夜時間帯に長距離確定と思える法人案件でした。

そのときの会社の規定では法人の予約案件は入社後半年以降からとなっていたので、なぜ自分だけにそんな好条件のスペシャルオファーがいただけるのかと、不思議に思いました。
しかしよくよく聞いてみると、それはスペシャルオファーどころか、とんでもない超絶クソ案件だったのです。
まずお迎え先が県外なのですが、そこまでは「迎車」で行かねばなりません。
つまり本来なら深夜料金が見込める時間を丸々つぶして、県外まで迎車料金(=上限ワンメーター)でお迎えに行ってこい、ということなのです。
これでは全く割に合わないどころか、大損害です。
さらには前回利用時にそのお客様の忘れ物があり、おわびがてらその品物もお届けしろとのこと。
つまり本来ならその県の営業所が対応する案件なのを、お忘れ物という不始末(※)があるがために県外のこちらで対応するという事故案件だったのです。
※私の会社ではお客様に忘れ物をさせないのはドライバーの責務であり、忘れ物を生じさせた時点でドライバーのミス(だからその処理もドライバーが全責任を持て)という扱いでした。
それならそれで本来はお忘れ物を見逃したご当人が自分で責任を取るべきなのですが、誰だってこんなことで貴重な深夜の営業時間を削りたくありません。そこで内勤を使って体よく自分の尻ぬぐいを新人に押し付けた、というのが真相だったのです。

私はそもそも予約案件を担当できる月数にも達しておらず、内規違反になるので必死に辞退しようとしましたが、「予約案件の勉強だと思って」「高速乗ってもいいから(←当たり前やろwww)」などと恩着せがましくなだめすかされ、結局その日の深夜時間帯の営業はこの一件のクソ案件対応で丸つぶれになってしまいました。
今となっては苦い思い出ですが、いい社会勉強になりました。
ついでに言うと新人をゴミ案件処理係としか考えていない会社の本質が見えて、タクドラという仕事からの転職を真剣に考えるきっかけにもなったので、結果的にはよかったのかもしれません。
ありがとうクソ案件!! 多分もう二度と乗らんけどwww
コメント