タクシードライバー求人の闇

転職活動をしていると、求人サイトなどでやたら目に付くのがタクシー会社の求人広告です。

働き方改革? その前にありもしない内容で堂々と求人広告打つのやめてもらえませんかね。。。

希望業種に関係なく普通に求人サイトを見てるだけで勝手にガンガン表示されるので、余程広告費用をかけてるのだと思いますが、キラキラした男女のドライバーさんが活躍するイメージ写真とともに「年収〇〇〇万円以上可能!」「ハイヤー部門・観光ドライバーへステップアップも!」なんてPRを見せつけられると、つい気になってしまいますよね。

また中高年は滅多にもらうことのない「スカウトメール」みたいなものもバンバン送ってくるので、特にタクシー業界なんかに興味がない人でも、求職活動が行き詰まっているときなど「これはもしや天の導きか?」なんて妄想してしまったりします(実体験)。

でも実際のところってどうなの? というあたり、気になる方や実際に応募を迷っている方もいらっしゃると思いますので、私が体験した範囲でタクシードライバー求人の実態を書きたいと思います。

専門ドライバーなんてない

まず押さえておいてほしいのは、求人サイトにはあたかも「観光ドライバー」「専属ハイヤー」など、何か別の専門部署があるかのように宣伝しているケースが目立ちますが、現状そんなものはどこにもありません

あれは釣りですわ、マジで。M社とかN社とか。

一部の会社では一定期間タクシー運転手の経験を積めば、タクシードライバーからそうした専門部門のドライバーに確実にステップアップ(=タクドラ卒業)できるかのように説明していたりしますが、少なくとも私が見聞きした範囲では大手系含めてどの会社にもそんなシステムはありませんでした。

特にコロナ以降、「観光ドライバー」に関しては現状完全に死滅しています

私がいた会社でもいちおう形だけは研修らしきことをしていましたが、肝心の現場は全く稼働していない状態で、地図を見ながら空しく架空の観光案内コース(案)やら事業計画(案)やらを作成して受講生どうしで発表してそれで終わりでした。

修了すると一応名前だけ「観光なんちゃらドライバー」的な社内資格はもらえますが、いやまじ何それおいしいの?状態です。それでもまだ乗務の合間に英語とかちまちま勉強してる人もいましたが、あれ、いつ役に立つんだろ((?_?)

観光部門に比べると、ハイヤー部門はまだまし(いいとは言ってない)で、私の会社では所定の研修に加えて半年~1年程度の業務経験と無事故無違反などの会社の定める条件を満たせば、ハイヤー案件をもらえるようにはなります。

但しこれも大半はハイヤー専属のような独立した部門などではなく、所属するタクシードライバーのベテラン勢の中から「今日はこれだけ案件きたから〇〇さんがハイヤーね」みたいな感じで日雇い的にハイヤーの案件をもらえる程度で、広告されているような「ハイヤー専属ドライバーへのステップアップ」とは全くイメージが異なります。

専属もないことはないですが、圧倒的多数はタクドラ兼務止まりです。案件のない日は普通にタクシーに乗務します。

この他、ケアタクシーやらキッズタクシーやら、タクシー各社がいろんな名目であたかも「専門分野のドライバーになれる=タクドラ卒業できる」かのように広告しているケースを見かけますが、どれも基本はタクドラとの兼務だということは知っておいた方がいいと思います。

入社案内などでもまずはタクシードライバーとして一定期間勤務していただき、その後云々」と、あたかも確実にタクドラを卒業できるかのようにも読めるような書き方をしているのをよく見かけますが、ここで確約されているのは「その後云々」の方ではなく、「まずはタクドラ」の部分だけです。

「その後云々」の方には「勤務成績により」などの条件が必ず付いています。そしてこの条件はあなたが仕事を頑張ったからと言って必ずしも満たされる保証はありません。会社のさじ加減一つです。

なぜなら会社が実際に欲しいのは末端のタクシードライバーであって、人気の高い「観光ドライバー」や「ハイヤー専属」ではないからです。現状、それらは人を集めるためのエサに過ぎないのが実態です。

「タクドラはどこまでいってもタクドラ」というのが偽らざる実態だと思います。

特に「観光ドライバー」に関しては、現状そんなものはありませんので、応募するなら「最悪一生タクシードライバーでも構わない」くらいの気持ちで気長にコロナ終息と観光部門の復活を待つ覚悟が必要です。

でも観光ドライバーに関してははもう完全に求人詐欺ではないかと思います。だってそんな部門、実際にどこも稼働してないんだから・・・

中高年は一生ドライバー確定

さらに、面接などで面接官が「実は私もドライバーで入社したんですよ」などと、あたかも2~3年ドライバーを頑張れば高確率で事務部門へステップアップできるかのようにさりげなくアピールしてくることがありますが、あれは絶対に真に受けてはいけません(特に大手系)

デスクワーク・・・そんなものがまだ世の中にあると思っていた時代が私にもありました。

あれはホワイトカラー職に未練のある求職者をタクシー業界に引っ張り込むための最後の殺し文句です。比率的にもほとんどのタクドラは内勤になんて一度もなれません。内勤なんてドライバー何十人かにつき一人いれば十分ですし、特にコロナ以降はタクシー会社でも今まで以上に非現場部門のリストラが進められています。

また特に大手系では数年ほど前から大々的に新卒採用に踏み切っています。実際私の会社でも数百人単位で四大の新卒を採用しています。全員が定着するわけではないですが、こうした新人の多くは「幹部候補生」などという吊り書きで入社している関係上、入社後1~2年内に必ず一旦は営業所の内勤や本社の管理部門・営業職など、ドライバー以外の部署に回されるのが慣例になっています。

何が言いたいかというと、新卒採用に踏み切った大手では新卒優先で人事を動かすしかなく、途中入社組の中高年にドライバー以外のポストを与えるような余裕はないということです。

ちなみに私の勤めていた小さなボロい営業所でも配置換え待ちの「新人幹部候補」があふれかえっていて、中高年のステップアップどころではありませんでした。

中途採用で入るなら一生ドライバーを覚悟しましょう。

でも新卒で入った人たちはみな自分たちは「幹部候補生」だ(だから中途採用のオッサン連中とは違う)と信じて疑いもしない様子でしたが(入社時にそう言いくるめられてるんでしょうね)、それだけ優秀な人たちでもポストの数から逆算したらどう考えても最終的に帳尻が合うわけがないという至極シンプルな計算問題には全く気づいていないようでした。。

まあ気付いた人たちは何も言わずにさっさと足を洗っていなくなってるんでしょうね。で翌年にまた新卒の大量募集をかけるという無限ループ。。。罪なものです。

稼げなくはない

唯一救いがあるとすれば、年収に関しては嘘ではなく、実際頑張り(プラス会社との相性)次第では年収5~600万円程度なら十分可能だという点です(別記事参照)。

稼げるっちゃ稼げますよ、ええ、稼げますとも。但しあれを「稼ぐ」というならですが・・・(※特に深い意味はありません)

但しこれも歩合による実績なので、事故や違反があればそれまでですし、半年1年頑張ってみても、必ずしも会社があなたを気に入ってくれて割のいい予約案件をちゃんと任せてくれるという確かな保証もありません。会社からの優良案件がもらえなければどれだけ頑張っても年収300万そこらがせいぜいというのがコロナ後の大阪のタクドラの実態です。

それで土日も祝日も朝も夜も関係なく繁華街を走り回り、無賃労働(別記事参照)をこなして通勤交通費やら未収金やらの自腹を切った揚げ句、事故や違反や迷惑客やらのリスクを背負って割に合う仕事かというと、私にはちょっと無理でしたね・・・

またいくら稼げるといってもあくまで歩合給ベースの話なので、多く稼ぐためには当然それに正比例して多くの時間と労働量を投入しなければなりません。「年収600万円可能!!」の広告は事実としても、それは単に600万円分走り回ればそれだけもらえますよというだけの話で、普通の月給制のサラリーマンの求人の「年収600万円」とは全く意味合いが違うという点には注意が必要です。

まあ私的にはそもそも1か月の実質拘束時間260時間超で手取り20万円に届かない(時間外・深夜手当込、交通費不支給)ような場所で年収600万円を目指す気にはなれませんでしたが。。。普通に最低賃金ぶち割ってるし。

ちなみに今更ながら元わが社のHP見直してみましたが、未だに「初年度~最高年収700万!」だの「所定労働時間17時間(隔日勤務・休憩3時間込み)」だの「年間休日200日以上(※勤務明け日を含む)」だの、全くの嘘ではないにしろ突っ込みどころ満載の求人情報垂れ流してて笑いましたwww

一応突っ込んでおくと、少なくとも私の知る限り年収700万クラスなんてベテランのトップ層にもほとんどいませんでした。まあコロナ前の東京とかまで含めて全国のグループ企業のどこかに過去に1人でもいたなら嘘にはならないのかもしれませんが。あと所定労働時間17時間はあり得ません。そもそも15時間以上車を動かすよう指示されますし(休憩3時間を含めて最低18時間以上が規定)、実態としても午後2時に出勤して翌日昼前に退社できればいいほうでした。勤務明け日を休日に入れるに至っては軽く頭おか〇いと言わざるを得ません。だって徹夜明けで普通に昼前まで働いてますからね・・・

結論:タクシー会社の求人HPの作成には高度なライティングスキルが要求される。

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